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私は、都内の大学を卒業して、東京都内のとある市役所に就職しました。
公務員。安定している。潰れない。ノルマもない。残業も民間より少なそう。
正直、就職したときは「これで人生、かなり安泰なんじゃないか」くらいに思っていました。
ところが私は、その市役所を新卒1年目で辞めました。
「せっかく公務員になったのに?」「もったいなくない?」――私自身もそう思っていたので、辞めるのは怖かったです。
それでも、ある疑問が頭から離れなくなりました。
「このまま30歳になったとき、私は何ができる人になっているんだろう?」
公務員になれば人生安泰だと思っていた新卒の私が、なぜたった1年でそこまで考えるようになったのか。実際に市役所で働いて分かったことを書きます。
「公務員って17時くらいに帰れるんじゃないの?」
私は普通にそう思っていました。多少忙しい日があるとしても、17時台、遅くても18時か18時半には終わるのではないか、と。
でも市役所で働いて最初に分かったのは、窓口に座っている時間も、自分の仕事は普通に溜まっていくということでした。
住民の方が来る。対応する。電話が鳴る。対応する。それももちろん大切な仕事です。ただ、その間に処理しなければならない事務仕事が消えてくれるわけではありません。
「今日これをやらないと」と思っていた仕事が夕方になっても残っている。では、いつやるのか。そこからです。
「公務員は暇そう」というイメージを持つ人もいるかもしれません。でも私が中に入って見た景色は、そんなに単純なものではありませんでした。限られた人員で行政サービスを回し、「今日忙しかったから、この仕事はやらなくていいや」では済まない仕事が大量にあります。終わらなければ残業になります。
ここで最初の幻想が壊れました。あれ、公務員になったら定時で帰れるんじゃなかったっけ?
でも、残業より怖かったことがある
残業だけだったら、私は辞めなかったと思います。もっと引っかかったのは、この仕事を5年、10年続けた先に自分には何が残るんだろうということでした。
市役所には異動があります。いろいろな部署を経験できるので、ジェネラリストとしては幅広い経験が積めます。これは悪いことばかりではありません。
ただ、私はそれをポジティブに受け取れませんでした。
たとえば民間企業でITエンジニアとして5年働いた人なら、「何ができますか?」と聞かれたときに、開発経験や使える技術、経験したプロジェクトを説明できます。営業なら、実績や目標達成率を語れます。
では、数年後の私はどうだろう。市役所は利益を追求する組織ではなく、民間企業とは評価軸も違います。数年後にはまったく違う部署にいる可能性もある。
「いろいろやってきました。でも、私の専門はこれです、と言えるものがない」。そんな30代になったらどうするんだろう、と少し怖くなりました。
もちろん、公務員として生きていくなら、それで問題ありません。幅広い行政経験は確実に武器になります。でも私は、もし将来、民間に行きたくなったら?と考えてしまったのです。
25歳で公務員から民間へ行くのと、35歳で初めて民間へ行くのとでは、同じではないはず。民間に行きたい気持ちがあるなら、若いうちに行ったほうがいいんじゃないか。この考えが少しずつ大きくなっていきました。
「テレワークできるじゃん」と思った私に、現実を叩きつけた仕事
もう一つ、私にとって大きかったのが働く場所です。私は将来的に、できるだけテレワーク中心で働きたいと思っていました。
自治体でもテレワーク制度を導入しているところはあります。最初は「市役所でもテレワークできる時代になるんじゃない?」と思っていました。
ところが、市役所には物理的にテレワーク不可能な仕事があります。同期が経験していた仕事の中には、ハチ、ハクビシン、アライグマへの対応など、現場に行くことが前提になるものもありました。
自宅のPCを開いて「本日はテレワークです」と言いながら、どうやってハチに対応するのでしょうか。無理ですよね。ハクビシンにも「本日は在宅勤務なので、Teamsでお願いします」とは言えません。
当たり前のことなのですが、私には結構衝撃でした。役所という巨大な組織には、そもそも現場に行かなければ成立しない仕事がかなりある。窓口もそうです。
しかも、今いる部署でテレワークできるかだけではありません。次の異動先は? その次は? 自分で完全にコントロールできません。
「21時まで仕事」の意味が、出社とテレワークでは全然違った
同じ21時まで仕事をするとしても、出社なら21時から帰宅です。電車に乗り、駅から歩き、家に着いてから夕食やお風呂。一方、テレワークなら21時にPCを閉じた瞬間に自宅です。
当たり前ですが、この差は大きい。朝も通勤時間がなく、昼休みも自宅なら自分の時間として使いやすい。
働き始めてから私は、「年収がいくらか」「残業が何時間か」だけでなく、自分の人生のうち、仕事に拘束される時間がどれくらいなのかを気にするようになりました。ここで、私が理想とする働き方と公務員とのズレはさらに大きくなりました。
一番嫌だったのは「来年の自分がどこにいるか分からない」こと
同じ「市役所職員」でも、部署が変われば仕事内容は別物です。希望を出す仕組みはあっても、「私はこの仕事を極めたいので、ずっとここにいます」と自分一人で決められるわけではありません。
ようやく仕事を覚えた。人間関係もできた。業務にも詳しくなった。――はい、異動。次の部署ではまた知らない仕事を一から覚える。
これを「いろいろな経験ができて面白い」と感じる人もいるでしょう。私は逆でした。
- 自分の得意分野を作りたい
- その経験を次の仕事でも使えるようにしたい
- できればテレワークできる仕事にしたい
私が嫌だったのは異動そのものというより、自分のキャリアなのに、自分でハンドルを握っている感じがしないことでした。
「じゃあ、40歳まで公務員を続ける?」
公務員を辞めるのは怖い。せっかく試験を受けて入った。親から見ても安心だろう。社会的信用もある。景気が悪くなったからといって、簡単に職を失う仕事でもない。
じゃあ、このまま続ける? 石の上にも3年? 5年? 10年? 20年?
そう考えたとき、「いや、それは違うな」と思いました。
そこで逆に、「1年目だから辞めづらい」のではなく、「1年目だからこそ動けるんじゃないか」と考えるようになりました。第二新卒として扱ってもらえる。まだ20代前半。未経験の業界にも挑戦しやすい。民間企業の仕事のやり方も、これから覚えられる。
35歳になって「あのとき民間に行っておけばよかった」と思うくらいなら、今動こう。そうして私は、市役所を辞めました。
ただ、新卒1年目で辞めるのは普通に怖い
ここは綺麗事を言いません。怖いです。「1年で辞めた人を採用してくれる会社なんてあるのか?」と思いました。
求人票には「社会人経験○年以上」「○○経験必須」という文字が並んでいる。自分が転職市場でどのくらいの位置にいるのか、応募できる求人はどれなのか、公務員経験を評価してくれる企業はあるのか。一人で求人サイトを眺めていても、よく分かりませんでした。
だから、今まさに「新卒で入った会社・役所を辞めたい」「でも1年目だから怖い」と思っている人には、辞表を書く前に、一回だけ転職市場を覗いてみることをおすすめします。
辞める必要はありません。転職する必要もありません。「今の自分なら、どんな会社に応募できるのか」を確認すればいい。
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短期離職をどう説明すればいいか、第二新卒としてどんな選択肢があるかを相談したい人には、こうした若手向けの就職エージェントが選択肢になります。
考えを整理したい人におすすめの本
「辞めるか残るか」をすぐ決める必要はありません。ただ、自分がどんな働き方を選びたいのかを言葉にする材料は持っておいて損はないと思います。
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私は「公務員を辞めた」のではなく、20代の時間を取り戻したかった
今振り返ると、私が嫌だったのは公務員そのものではなかったと思います。安定性を重視するなら、公務員は非常に魅力的な仕事です。いろいろな部署を経験したい人にも向いているでしょう。
でも、私が欲しかったのは、「安定した人生」より「自分で選べる人生」でした。
どんな仕事を専門にするのか。どこで働くのか。将来どの会社へ行くのか。出社するのか、テレワークするのか。そこをなるべく自分で決めたかった。だから、市役所を1年で辞めました。
そして今、「せっかく新卒で入ったのに、辞めていいのかな」と悩んでいる人がいたら、一つだけ言いたいです。
1年で辞めることだけを怖がらなくていい。
むしろ考えてほしいのは、「辞めなかった場合の5年後」を、自分は本当に望んでいるのか。ということです。
答えがYESなら残ればいいと思います。でも、「5年後もここにいるのは違うな」と思うなら、少なくとも外の世界にどんな選択肢があるのかくらいは、今のうちに知っておいて損はありません。
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辞めるかどうかは、そのあと決めればいい。私の場合は、1年目でそれを考えた結果、市役所を出ることを選びました。